院長ブログ
2026.08.09
ゾンビ映画で学ぶ免疫(獲得免疫)
4億年前から生きているカブトガニには自然免疫しかない。獲得免疫と言うくらいで、我々脊椎動物が進化の過程で獲得したものなのだ。
もっと細かく説明すると、顎(あご)をもつ脊椎動物から獲得免疫は備わった。噛みついたり嚙まれたりは、身体に取り込むことができる栄養の種類が劇的に増える利点と、害をなすものも身体に入ってくる欠点を生んだ。自分に害をなすものを見分け、しかも一度害をなしたものには二度と同じ目に合わないようにしておく必要があったからである。顎の出現は、ゾンビ映画が誕生する進化的な起源なのかもしれない(ウソ)。
ということで、噛みつきゾンビから世界を守るワールドウォーZ(以下WWZ)に戻ろう。
主人公(ブラピ)はエルサレムでのてんやわんやの最中にあって敵ゾンビの特徴を捉えていた。そしてWHOの研究機関に向かい、研究者にその特徴を伝える。自然免疫は侵入者を片っ端から攻撃するが、獲得免疫はまず敵の特徴を覚え、狙い撃ちにするように準備する。WWZでのブラピは獲得免疫での樹状細胞にあたる。敵の特徴を捉え、その情報をリンパ節に持っていき、情報を伝える(抗原提示)。そうするとWHOの研究機関は免疫リンパ節にあたるだろう。情報を受け取った免疫細胞は作戦を練り、屈強な者、兵器を操るものなどの特殊部隊を編成する。感染すると、その近くのリンパ節が腫れるのはこのせいだ。紛争を解決するためには兵士の駐屯地は活発にならねばならぬ。
さて、ここからはWWZを離れ、一度くらいは洋画劇場で見たことがある「バイオハザード」で免疫の学びを進めよう。
抗原提示を受けた免疫細胞のように、バイオハザードでのアンブレラ社は特殊部隊を地下施設に送る。そこでは、こっそり作っていたウイルスがまん延してしまい中に閉じ込められた人がゾンビになっていた。部隊を指揮するワン隊長はさしずめヘルパーT細胞だろう。ワン隊長はレーザーでさいの目切りにあってしまったが(有名なシーンなのでyoutubeにあるよ)、免疫でのヘルパーT細胞は抗体を量産するように司令を出す。抗体は病原体に対する特殊ミサイルと思ってくれ。「バイオハザード」でのロケットランチャーみたいなものか、あっゲームが混ざっちゃった。
そして我らがアリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)が登場する。アリスはゾンビ犬を蹴り倒し、突然変異したクリーチャー(リッカー)と戦う。ゾンビを選んで攻撃するこの姿が、キラーT細胞と覚えよう。キラーT細胞は、樹状細胞から抗原情報を受け取り、ウイルスに感染した細胞やがん細胞などを特定し攻撃する。また、自身の体内で異常を起こしている細胞もキラーT細胞は攻撃する。親しい人がゾンビになったとき、悲しみを携え銃を撃つシーンはゾンビ映画では唯一涙を誘うところだ。免疫も一緒だね。
そしてキラーT細胞の活躍は初回だけで終わらない。メモリーT細胞となって組織に留まり、再び同じような病原体が入ってきた時は「覚えていますよ」と言わんばかりに迅速にやっつけるのだ。はしかや風疹が二度と罹らないのは、獲得免疫の記憶するという働きによるものだ。ここまで免疫を学んだ読者の皆さんはピンと来たと思うが、ワクチンはこの免疫記憶を応用している。
さてもっとアリスを拡大して捉え、バイオハザードⅡ以降のアリスを記憶がよみがえった獲得免疫の働きとしよう。例えば子宮がんワクチンは、癌の原因であるパピローマウイルスへの免疫記憶を作る。そして、将来パピローマが侵入してきた時に「覚えていますよ」とアリスはお得意の二丁拳銃(抗体)をぶっ放してやっつけてくれる。
バイオハザードシリーズではアンブレラ社がどんなゾンビを生み出そうとも、アリスは抜群の格闘センスと武器で返り討ちにし、全6作品を通じて圧倒的な無双劇を繰り広げ続けた。
子宮頸がんのアリスだけでない、帯状疱疹のアリス、肺炎球菌のアリス。。。さぁ!ワクチンを打って体の中にアリスを育もう!
(イメージ図Gemini作成)
