院長ブログ

2022.05.29

ツバメ2022 

まだ肌寒かった4月の初め、”1羽の燕尾服を着た紳士”が私のマンションに飛んできた。
南の国からの長旅を癒すかのように優雅に水平飛行しながら、どこに住もうか迷っているようだった。
やがてマンションで、いくつかの内見(?)を済ませた後、我が家の玄関先にある去年のツバメたちの空き家を自分の巣と決めたようだった。
家が決まったら次はお嫁さんを探しだ。
すぐに好みのメスを見つけ、彼女をめぐるライバルとの小競り合いに勝った後、5月の初めには2羽で好みに合うようにリフォームを始めた。。。

ツバメは春に暖かい南から日本に子孫を残すために戻ってくる。
子孫を残すためにはメスに選ばれなければならず、メスにもてるためのいくつかの条件がわかっている。
人間でいえば昔、三高(高学歴・高身長・高収入)と言ったものですが、今は死語ですな。
ツバメのメスもなんだかんだ容姿を重視し、尾羽が長く、のどがより赤いオスを好む。
また、オスが紹介する縄張りや古巣を下見して、オスの資産が高いほうを好むようだ。
古い巣が残っているということは、カラスなどに壊されず、そこで子育てが無事できたという証なので資産価値が高い。
ということは我が家の玄関先を縄張りにするだけでもう資産家なのです。
「やっぱり、見た目と金かよ!」と、思うかもしれないがご安心(!?)を。
子育てを一生懸命やるオスは巣作りも一生懸命やるのでそういう点や、
他のオスからのちょっかいから自分を守ってくれるかどうか?など
気の利いたオスかどうかも夫婦となる判断基準になるらしい。
ツバメは人間のすぐ近くでオスメス2羽で子育てをする姿から”浮気しない誠実な鳥”と思っていませんか?
ヨーロッパのツバメをDNA鑑定してみると、巣の卵の平均30%は別のオスの卵で、自分の夫が魅力に欠けるときほど浮気する傾向にあるそうです。
ちなみに日本のツバメの場合は3%で、ヨーロッパのツバメよりは貞節を守っているのですかね。
誠実な鳥と言えばアホウドリを置いて他にはない。
孵化したアホウドリは巣立ちの後おおよそ6年を単独で過ごし、放浪の後に生まれ故郷に帰ってくる。もちろん家族を作るために。
気に入ったメスたちとは最初はグループ交際で、だんだんグループの規模が小さくなり、相手を絞っていき生涯の伴侶を決める。数年かかることもあるそうだ。
卵を産むのはもちろんメスだが、オスも抱卵もする。一人っ子のヒナが生まれると両親が交互にエサを与える。
ヒナが成長すると両親は繁殖地を離れ、それぞれ別に暮らすが、
時期が来ると携帯電話もないのに繁殖地に戻り同じ相手とまた子育てをする。
そしてそれはどちらかが死ぬまで生涯続く。。。
夫婦関係で悩んでいる人がアホウドリの繁殖地を訪れると、ひざまずいてしまうのではないだろうか?
そしてもう、”アホウドリ”って言いたくなくなるのではないだろうか?
さて、ツバメの若夫婦はというと。。。
この2週間温めていた卵がようやく孵り、昨日(5/28)まだ産毛だらけの黒い細い首が見えてきた。もう生後数日は経っている。

(何匹写っているでしょうか?)

実は若夫婦が巣をリフォームしているときに「ふう?ふうなの?」と話しかけてみた。
2羽には「何言ってるの?」って顔で見られただけだった。。。。ふうのはずがないか。。。
でも”ふう”と血がつながっているツバメかもしれない。
あるいは南の国で”ふう”と会ったことのある知り合いかもしれない。今年のツバメは早かった。それは”ふう”がきっとこう教えたのだろう。
「太平洋を渡っていけば大きな山が見えてくる。そのふもとの池の近くのマンションはヒナが落ちても何とかしてくれる。優良物件だよ」
そろそろ冷蔵庫にミルワームを入れておこう。