院長ブログ
2026.05.14
知能の進化
この人工知能・AIの時代にあって、線虫の知能を書いた前回のブログを”時代遅れ”と評価される方も多いだろう。
今から30年前のAI界隈も”知能とは人間だけが操れる言語、知性、問題解決能力だ!”派は、知能の進化からAIを開発しようとするやり方を批判していた。「ミミズと人間は違う」と。
だがこの線虫レベルの知能を応用したロボットは世界中で爆発的に売れた。その名も”ルンバ”である。ルンバはランダムに動き、障害物にぶつかるとそれから遠ざかるように向きを変え、バッテリーが少なくなると充電ステーションに向かう。線虫の感情が長く持続するところなんか、汚れているところを重点的に掃除する”汚れ検出機能”にそっくりだ!
生物の成功は複製された遺伝子の数、つまり子孫の数と言われる。ルンバは全世界で累計5000万台も売れたのでロボット界のビックダディ、大成功と言ってもいいかもしれない。
しかしルンバも知能が一歩進み学習となると弱みを見せる。私が進入禁止エリアをバーチャルウォールで設定し忘れるとスイスイ入って段差にひっくり返っていた。忘れる私が学習していないともいえるが。
線虫から5000万年進んで5億年くらいになると脊椎動物が誕生した。水槽に迷路を作ると魚は透明な壁に何度も当たりながら正しい穴を見つけられる。なんなら網に引っかからないように小さな脱出口を泳ぐことだってできる。段差でひっくり返るルンバよりは洗練されている知能を持つ。
魚に迷路を解かせたのは、「人間が他の生物たちと進化と言う線で繋がっているならば、学習のメカニズムにだって共通の原理があり、それを知ることで子供たちに新しいことを教える一番良い方法になるのではないか」と考えたからで、結局”試行錯誤・TRY and ERROR”がその答えだった。試行錯誤し、うまくいったことを強化し、うまくいかなかったことを捨てることで学習する。子供には試行錯誤を促すことの方が、手取り足取りより学習になるということだ、進化的には。
さて脊椎動物のトリ、ホ乳類に話を移そう。母親と戦うハクビシンはホ乳類のジャコウネコ科だ。
ホ乳類は体温を保つことができる恒温動物であり、温かいと神経細胞が活発に働きやすいので脳が魚類やハ虫類より大きくなった。大きくなった脳がしていることは想像する=シミュレーションだ。他の脊椎動物が実際の行動を試行錯誤して学習するに対して、ホ乳類はシミュレーションした行動から学習できるようになった。ホ乳類以外でシミュレーションできるのは鳥類で、ツバメを手に抱いたことがあるのでわかるが、彼らはとても温かい。
ただ想像=シミュレーションできるということは叶わなかった現実を受け入れることで、ここで”後悔”が誕生した。人間の苦しみの原因は執着すること、と仏教は説く。過去に執着する後悔は、ホ乳類が誕生した2.5億年前に組み込まれてしまったのだった。お釈迦様はご存じだったのだろうか?

駆除業者が設置した罠にかかったハクビシン。
この時期にはごちそうのリンゴに釣られてしまった。心なしか後悔しているように見えた。