院長ブログ

2026.10.04

パラサイト

今から数十年以上前、医学生だった私は身の入らぬ「寄生虫学」の授業を受けていた。
「昭和の不衛生だった時代の学生ならいざ知らず、平成の学生に将来、一体何の役に立つのだろう?」と真剣にはなれなかった。
だから寄生虫(条虫症(サナダムシ)、肺吸虫、日本住血吸虫などなど)の一生を暗記しなければならなくてもそこに面白みは感じられなく、もっぱら授業のスライドをSFホラーとして楽しんでいた。
ただ進級するには寄生虫学の単位は必須で、寄生虫の単位だけを落とし進級できなかった同級生が一人いた。役に立つとは思えない学問で一年を棒に振る彼に心底同情した。卒業後は風のうわさで都会大学の心臓外科教室に進んだと聞いたときには、心臓外科医なら寄生虫に出会うことも無いだろうと思った記憶がある。
さて、生きること全般からの問いに対し、うまく解決する能力を”知性”とするなら、生物はみんな”知性”を持っている。そこで今回は寄生生物、なかでも寄生虫について考えてみた。
世界3大感染症の一つマラリアは(他の二つは結核とエイズ)はマラリア原虫が蚊の中で増殖し、その蚊が吸血する時に人の体内に入ってくることで感染する。マラリア原虫はまず蚊に対して満腹を感じにくくさせる。お腹がすいている蚊は普段より長く血を吸い、なんどもブスブス刺す。そうすることで感染のチャンスが上がる。次に人に対しては高熱を出させぐったりさせる。元気ならば追い払われる蚊にとって、ぐったりした人は蚊を追い払う元気もない。マラリア原虫にしてみれば、蚊を通じて次の人間に感染しやすくなるというわけだ。そんなマラリア原虫に操られた蚊は”最も多く人の命を奪う生き物”の称号を得ている。因みに、戦争やテロを起こす人間は2位(ただ自殺も含めると圧倒的な1位)。
♪妻を~めとらばぁ~才たけてぇ~♪トキソプラズマに生まれたからには、才たけるためにはネコの腸に行かなくてはならない。無事子孫を成し、猫の糞に紛れて世に出た子供たちは他の哺乳類、主にネズミの体内で武者修行し、親になるためには再びネコの腸を目指す。ネコに食べられやすくするため、武者修行中にネズミの脳を操作する。操作されたネズミはネコの匂いが好きになり、無気力になりネコに注意を払わなくなるという。
有名なアニメのように説明すると、おっちょこちょいな家ネコのトムの腸で生まれたトキソプラズマは未熟なまま糞と一緒に外に出される。同じ家の中でいろんなものをかじっているジェリーが運よくのみ込んでしまうとあら不思議、ジェリーは警戒感が緩み、トムの前にのほほんと立つ、ってな具合だ。このアニメの作者はトキソプラズマに感染したネズミを見て着想したのではないだろうか?
生物として地球に生まれたからには場所とりもしなければいけないし、生きていくエネルギーを得なければならない。寄生生物が感染するのは宿主から生存と繁栄のエネルギーを得られるからより他にない。繁栄の基準は遺伝子の複製=子孫の数によって測られる。ストレートに子孫を残そうとする彼らに比べ、人間は愛する人を平気で傷つける。むしろDV男(女もいるが)はいざ離婚になると”離婚したくない”と判で押したようにごねる。なんて人間は不自由なんだろう!
今の私は寄生虫が見せる知性に感嘆せずにはいられない。そして、Youtubeの不倫・DV成敗番組の見過ぎを反省しなきゃ。