院長ブログ

2023.04.12

赤い薬

その子には「瞑想」について書かれている本を渡したのだった。
ただ、スピリチュアルな勧誘と絶対に捉えられたくはなかったので、本と一緒にこう言い添えた「良い姿勢で座り、鼻からゆっくりと深い呼吸をして、呼吸に意識を集中させてみて。これだけだよ」
ここまで読んで難関志望大学に合格するために、どんな素晴らしいコツが書かれた本だろうと想像していた親御さんからはクレームが来るかもしれない。「私は合格のコツが知りたいのであって、鼻毛の揺らしかたを聞きたいのではない!」と。確かに微分積分を解いている時には鼻毛が揺れていることはどうでもよい。けれど、鼻呼吸をし、そこに集中することで微分積分も解きやすくなるのだ。

ここで、お恥ずかしながら私の瞑想を披露しよう。
スマホを15分にセットする。できるだけ部屋を静かにし、良い姿勢で座り、目を閉じる。鼻から呼吸をし、出入りする息に心を集中させるが、ほんの3秒もすれば意識がさまよってしまう。散々さまよった挙句に、ようやく私は意識がそれていたことにやっと気づき、また呼吸に意識を戻す。しかしまた、5秒もすると。。。これの繰り返しでほとんど自分を制御できていない。
何てこった!私は自分を意のままに動かす、「株式会社 釣田美奈子」の社長だと思っていたが私の自分へのコントロール能力は鼻から入ったり出たりする空気を見守る守衛よりも低い。だって、数秒で持ち場を離れるのだから。。。
本を渡した子の親御さんも瞑想をやってみたようだ。「私は30秒もできませんでした」と感想を伝えてくれたから。どうやら彼女の守衛は30秒で退職したらしい。。。
このように”私”というものは”自分”をろくすっぽコントロールできないのに、コントロールできている感を抱かせるのはどうしてだろう?こんな妄想を見させる理由は?それは妄想を抱いていた方が、子孫を残す相手として選ばれやすいから。ギャートルズの原始時代では嘘でもいいから「俺、毎日マンモスとってくるぜ~」と言う男に惹かれるだろう。そう、私たちはそういう男に惹かれた子孫でもある。

映画マトリックスをご存じだろうか?
マトリックスの中では人工知能に操られている人間はエネルギーのためにぬめぬめしたポッドに入れられている。意識は奪われ、おとなしくさせるため仮想現実を見させられている。そんな映画の世界を私は笑えない。脳はそうとはわからないくらい巧妙に妄想を見させ、子孫を増やすように人間という動物を促していることと、変わらないように思うのだ。
瞑想をすることで、妄想する自分を私から離すことができる。
瞑想をはじめ数秒で意識がさまよっても(妄想)それに気づく、これはメタ認知そのもので、
気づきの後もう一度鼻呼吸に意識を戻すことで過去でも未来でもない”今”に心を置くことができる。この心が今にあることを”マインドフルネス”という。瞑想の時間は妄想を抱く自分をメタ認知し、心をマインドフルに導く心のトレーニング時間だと思っている。心が”今”にあれば、物事をあるがままに理解でき、理性的な認知が最大限発揮できるだろう。
微分積分も解きやすくなるし、「俺、毎日マンモスとってくるぜ~」にはだまされない。と思いませんか?

おっと、ここまで書いて気がついたが、どうやら私はマトリックスのモーフィアスだったらしい。
キアヌ・リーブス演じるネオにモーフィアスは言う「青い薬を飲めばそのまま仮想現実に、赤い薬を飲めば真実を見ることができる」と。瞑想の本は赤い薬だった。あの子はネオ同様、赤い薬を選んだのだった。
4月からの新しい環境で不安にさいなまれ、現実から心が離れて(マインドレス)ている人にも赤い薬を飲んで欲しい。。。
そして、今回までの3つのブログを書きながら、半ば確信したことがある。
大谷翔平選手は瞑想をしているのではないだろうかと。瞑想していないにしても”マインドフルネス”を意識しているのではないかと。もし、瞑想もしていなく、マインドフルネスを考えたこともないのなら。。。
お釈迦様が大谷翔平の身体を借りて、野球を楽しんでおられるのに違いない!