院長ブログ

2023.04.23

コロナの子供たち

GW明けからコロナの扱いがインフルエンザ並みになる。
この3年間、コロナウイルスは今回も含めて私に13個のブログを書かせた。
その一つ「ハーロウの子ザル」をもう一度思い出してみる。
生まれたばかりのアカゲザルの赤ちゃんを母親から離して育ててみる。本当の母の代わりとしてワイヤーで作った母さんと布で作った母さんとを準備して。
どっちかを選べるようにしてみると、ワイヤー母さんにミルクを入れた哺乳瓶をつけても、子ザルはほとんどの時間を布母さんと共に過ごした。布母さんは柔らかく、暖かくて、本当の母さんのような心地よい触覚を子ザルに与えたのだろう。
選べないようにワイヤー母さんだけで育てた子ザルは成長しても友達も作れず、子作りも下手で、子供ができても虐待、ネグレクトで育てることができなかったそうだ。触れ合うことの心地よさを経験しなかった子ザルはサルに生まれただけで、サル社会の一員になれなかった。
ハーロウの子ザルは、触れ合うことで得られる精神的な心地よさが成長には大切だと教えてくれる。
ハーロウの子ザル実験は1950年代に行われ、今の時代では倫理に反するとして認められないが、実は人間版も存在する。
1970年代のルーマニアでは独裁者が”国力は人口”と考え、中絶も避妊も禁止になった。
ただでさえ貧乏な国で子供が増えたらどうなるか、育てられなくなった子供が乳児院にあふれ、職員一人当たり20人の乳児を担当していたという。愛情を与えられず、最低限生きることしか、面倒を見られなかった乳児たちは大人になってからも失業率が高く、精神科に通院している率も高いという。こういう子供たちはこの独裁者の名をとって「チャウシェスクの子供たち」と言われている。

この1年間の小中高校生の自殺が512人で過去最高となった。というニュースが先月流れた。これは、コロナ禍の初期から私が最も危惧していたことでもあり、こうなることは予想できていた。
別に私が抜群の予言者だからではなく、アカゲザルで起こることは同じ霊長類のヒトでも起こるだろう。他者とのつながりはそれがあったから人類が発展してきたのだし、精神の健康、情動面での健康、つまりどんな人間になるかのカギがそこにあると思うから。
自殺した子供にとって「人との接触を避けるように」となった社会は、まるでワイヤ母さんの飼育箱のようだったのだろう。「コロナの子供たち」と言えるかもしれない。 
それでも私は悲観はしていない。ヒトが持つマイナスをプラスにする力を信じているから。
触れ合うことの大切さに気づき、それを生活で実践できるなら、再生は早い気がしている。

来週からGWなので、しばらくブログはお休みします。