院長ブログ

2021.05.10

耳石のめまいについて

 海にぷかぷか漂うクラゲはどうやってバランスをとるのだろうか?
重力には無関係に海をさまよっているように見えるが、
実は重力を感知し、自分の体の傾きを知り、自然にコントロールしている。
クラゲには、小さな液体の入った袋があって、その中に”平衡石”が浮いている。
仕組みはこうだ。
身体が傾くと、石がずれるから自分の体が傾いていると判断し元に戻そうとする。
”おもり”を身体に持つことで、バランスをとっている。
ザリガニはこの平衡石が触角の根元にあり、
脱皮するとなくなってしまうので、砂を拾って自分で補充している。
だからザリガニを飼うときは砂を底にまいたほうが良いそうだ。
地球上の生き物は平等に重力の影響を受けるので、
似たような装置が私たちにも備わっている。
クラゲやザリガニの”平衡石”に相当するものが、
私たちでいう”耳石”になる。

ヒトの場合、耳石はクラゲのように袋に入っているのではなく薄い膜に覆われている。
そこから耳石が剥がれ浮遊し、半規管に入りめまいを起こす。
この病気を”良性発作性頭位性めまい”という。
私はこの病気を研修医1年目に、
当時の上司が画期的治療を論文で見つけ学会発表したことで知りました。
正直、初めて知った時は「うっそ~」と思いましたよ。
だって、見えないんだもん。(耳石は内耳にあるので耳をのぞいても見えません)
見えないけれど、そこにあると思って治療をする。高度な観念のように思えました。
上司の発表をきっかけに知った耳石置換療法という治療法は、
効果が高いことがわかり、瞬く間に日本中に広がって
今ではネット上でもそれぞれのタイプに合った詳しいやり方が紹介されています。

”良性発作性頭位性めまい”は特徴がはっきりしています。
「寝返りを打ったり、起き上がると、めまいがします」
という、特定の頭の位置でめまいが起きる。
「めまいは長くは続かないんです。一瞬でもないけど、じっとしてると止まります」
めまいの、持続時間は大体数秒から、数十秒。
「あれっと思ってまた寝ると、めまいが軽くなるんですけど、
しばらくするとまた回るんです」
同じ頭の位置を繰り返すとめまいが軽くなっていく。
「」の会話部分が患者さんのお話、その下の行は診断するための条件です。
このように患者さんの話を聞いていれば、
自然に診断できるという、ありがたい(?)病気でもあります。
なので私の横に座ってくれているスタッフは、患者さんの話を聞くと
カルテに診断を書き始めます。
おまけにどの耳石置換療法をするかも、
看護婦さんに「多分、~~~だと思う」とコソッと伝えています。
また当たっているんだ、これが。。。

別の意味でも特徴があって。。。
「治りました!ゴルフのパットが入るようになりました!」
頭位性めまいの間は、微妙な揺れがあって、パットがうまく入らなかったそうです。
また、話では本当に特徴的で私も聞いてたスタッフも
絶対めまいが再現される!と挑んだのに、2回ともめまいが起らず、
「今日は、出ると思います」と自信満々に3回目の受診をされた患者さん。
予想通り、めまいが再現されると
「やった~、めまい出た~!」と、目が回っているのにもかかわらず、とても喜ばれました。
耳石置換療法をやって、これですっきりするでしょうと話すと、
「いいえ、めまいを皆さんに見てもらえたことですっきりしました」と
満面の笑みで帰って行かれました。
ホント、ヒトのツボはわからないわぁ。