院長ブログ

2023.02.08

習慣について

2月に入りスギ花粉の飛散が始まりました。
花粉症に対する舌下免疫治療ゾレア注射については今までこのブログで書いておりますので参考にしてください。このような地道な宣伝効果のたまものか?舌下免疫治療を希望される方が昨シーズンから増えてきました。今回はそれにまつわる話を。。。

さて、舌下免疫治療(以下、舌下)にはスギとダニの2種類があり、どっちにしてもやることは一緒。毎日1回、舌の下に薬を1分間いれるだけ。そう”だけ”なのです。。”だけ”なのに先月の診療で舌下をやっている小学生から「めんどくさくて、後回しになっちゃうからよく忘れちゃう」と聞かされた。
親御さんも本人も舌下をやってから鼻の調子がよくなったという実感はあるので、治療が嫌だというわけではないだろう。半年以上前に「お母さんが準備せずに、自分で準備して舌下をやる」と診察室で宣言した後はしばらく忘れずに続けられていたのに。
う~ん、子供の気持ちは子供に聞くのが一番だ!
舌下をやっている他の子に「めんどくさくて後回しにして忘れちゃう子がいるんだけど、どうしたらいいかアドバイスある?」って聞いたところ、「そんなの習慣だから特にないよ」と冷たく言われてしまった。
習慣か!では習慣はどうやったら身につくのだろう?やっぱり時間?
21日続けば習慣になるとの考えを聞いた気はするが、調べてみたら、ある研究によると朝起きたら水を1杯なら習慣化するまで10日もかからないが、昼食には果物を食べるのは20日は必要だという。朝の腹筋50回は3か月かかってもできないが、朝の散歩は1か月半で習慣化されるという具合に、どんな習慣を目指すかによっても必要な時間は違ってくる。
自分の経験だが、舌下を始めた当初は忘れるのは決まって休みの日だった。平日は朝食の後に目に見えるところに置いてある薬に自然に手が伸びる。しかし休日は朝食後に本を読んだり、ヨガをし始めたり時間の使い方が平日と比べてゆっくりなので薬に手を伸ばすきっかけが失われていたのだろう。”朝食直後”に変えてからは毎日忘れずにできている。
”習慣になる”ということは、それが無意識に落ちることと同じ意味のように思う。
意味のない(意味が薄れてきた)繰り返しの作業を無意識が担当することで、意識を意味のある決断に割り振ってくれる。だから舌下を忘れる子に「気合いだよ、集中してやるんだよ」とアドバイスすることは無意味どころか、貴重な学習に割り振らなければならない”意思決定”を削いでしまうからむしろ”害悪”だろう。
舌下だけではなく、こんな”無駄な頑張り強要”は少なくするのに越したことは無い。
もう一人アドバイスを求めた子は「僕は歯磨きした後にやっているよ。歯磨きは忘れないからね」二人の先達からの意見を参考に、私の”朝食直後”もう一人の子の”歯磨き後”のように無意識にできている習慣からキューが出て、自然に反応できる時間がないか探すことからアドバイスしてみよう。
思うに、人はかなりの割合で習慣でできているのではないだろうか。
寝る、起きる、朝食を食べる、歯を磨く、タバコを吸う、お酒を飲む、本を読む、ゲームをする、お菓子を食べる...etc
たばこや過度の飲酒のような悪しき習慣を深く考えないで続けているように、良い習慣とされるものも意識していないと思う。どの習慣を身につけるかで結果や未来は変わってくることは想像できるだろう。朝ご飯を食べない子の成績は?タバコを吸う人の健康度は?
小学生と言えばまだドロドロした鉄のようなものでどんな習慣も身につけられるので、どんな形の未来にもなりえる。
舌下を忘れてしまう彼には、このことをきっかけに習慣について考えることもこっそりアドバイスしてみよう。