院長ブログ

2022.04.24

乗り物酔いについて

「うちの子は乗り物酔いしやすいんです。耳が悪いのでしょうか?」
という質問を遠足の前になってくるとよく受ける。
私自身も自分で運転するまでは、必ず乗り物酔いをしてましたよ。
中学2年生の時に乗った”はとバスツアー”。
東京の名所、明治神宮とか東京タワーとかに寄ってくれたはずなのですが、
バスから降りるたびに吐く場所を探していたので、トイレの床の記憶しかありません。。。
ということで今回は乗り物酔いについて考えてみよう。

バランスは耳だけでとるのではない。
耳で重力や回転に対して正しい位置にいることを確かめ、
目で位置を確かめ、
筋肉や関節が状況に合わせて動く。
この3つの情報が脳に伝わり、バランスをとっている。
しかし、乗り物の揺れやスピードのせいで、
脳が処理できる限界を超えると自律神経が混乱し、
めまい感、吐き気、冷や汗など、乗り物酔いの症状が出てしまう。
とはいえ、視覚のない人でも乗り物酔いを起こすが、
耳のバランスをとる働きが無くなった人は乗り物酔いを起こさないことから、
乗り物酔いにもっともかかわる場所は耳というになる。
ということで以前は、乗り物酔いの原因は、入ってくる情報が過剰で脳の限界を超えてしまうから、と考えられてきた。
けれど、人類が宇宙に行くようになって、どう見ても刺激過剰の打ち上げの時より、
無重力のふわふわしているときに酔いを訴える飛行士が多いことから、
現在は脳に入ってくる情報と、脳の予測がミスマッチを起こしていることが原因と考えられている。
これは宇宙飛行士でなくても実感できる。
ユニバーサルスタジオジャパンの乗り物しやすいアトラクションランキングで、
いわゆる絶叫マシンの”フライングダイナソー”が5位にもかかわらず、
堂々の1位は”ハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニー”で
これはバーチャルなシュミレーターみたいなアトラクションだ。
フライングダイナソーでは急降下・急上昇、ねじれながら回転。。。が実際に起こるから
目で見えているものと、耳が感じている情報がまだ一致しやすい(充分怖いが)。
一方、目で見えるものは箒(ファイアボルト)にまたがった世界だが、
耳は重力の加速度を感じないのでミスマッチが起きやすいのだろう。
耳の重力を感じるところは”耳石”である。(以前のブログ「耳石のめまいについて」参照) 
耳石の働きに左右の差があると、乗り物酔いを起こしやすいことがわかっている。
そして、その左右の差は紫外線が多い夏に広がりやすい。
耳石のめまいも、乗り物酔いも成人では圧倒的に女性に多く、

乗り物酔いは生理前に強くなる傾向にあることから、
女性ホルモン=エストロゲンのもつカルシウム(耳石はカルシウムが主成分)への影響が
乗り物酔いに関係すると考えられている。

さて、乗り物に酔うとせっかくの遠足がちょっと悲しい。
相手が脳や自律神経であるから、前日にはしっかり睡眠をとり体調を整えて欲しい。
酔い止めの薬を飲んで出かけるというのもよいだろう。
また、自分で運転する、つまり能動的な動きをする、と酔わない人が多いことから
遊園地などでは乗り物のコースをあらかじめ頭に入れておくことが勧められている。
まあ、でもコーヒーカップぐらいなら頭に入るが、
フライングダイナソーは頭に入るのだろうか?ハリーポッターは?

ハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニーで
最大級の乗り物酔い状態になった私は酸っぱい胃液を口に含みながら、
なんとかお土産の”かえるチョコ”は買えたが、吐き気がひどく、隣のトイレに入った。
このトイレはハリーポッターに出てくる、女学生幽霊”嘆きのマートル”が出てくるトイレだった。
だとしたらここは「秘密の部屋」の入り口。
気持ち悪いのに、マートルの愚痴を聞きながら、ハリーポッター第2巻秘密の部屋のラストのダンブルドア先生の言葉がよみがえる。
「自分が本当に何者かを示すのは、持っている能力ではなく、自分が
どのような選択をするかということ」
はい、ダンブルドア先生。もう二度とハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニーには乗りません!