院長ブログ

2022.04.13

個性って何かね?

我が家のベランダは割と広く南、西、北に柵がある。
昨年の夏から2匹のイソヒヨドリのオスがベランダにやってくるが、北側の柵が2匹の境界線になっている。
この2匹は壮絶なテリトリー争いをしないので、おそらく兄弟だと私は思っている。
そして、私はこの2匹の見分けがつく。
兄は食べ方が美しい。乾燥ミルワームをついばみ割れたかけらが飛ぶとそれを拾う。
全部は食べつくさないで、「またあとで」ってな具合で残しておき優雅に飛んで行く。
弟はあればあるだけがつがつ食べ、見ると食い散らかしたかけらが散乱している。
また弟は兄のいない時を見計らって兄の餌場にやって来る。時々見つかって、睨まれているけど。
兄が弟のえさ場に侵入したところは見たことがない。
鳥にも個性があるが、人間の個性はどうやって決まるのだろうか?

人間が持つ特性がどれほど遺伝するかは双子の研究からヒントが得られる。
遺伝的に同じの一卵性双生児と、遺伝的には他の兄弟と変わらない二卵性双生児を比べるのだ。
例えば双子同士の身長の差は一卵性の方が少なく、遺伝要因は85%だそうだ。
ただし、先進国のように栄養状態が満たされている場合ではという条件が付く。
貧しい国では栄養の十分かどうかが身長に大きく影響するので遺伝要因は50%に下がる。
性格を決める要素は(外向性、神経質か、協調性などなど)は大体50%前後、つまり半々だ。
耳垢は100%遺伝で決まる。一方、言葉の訛りは100%環境による。
だって両親が富山県民の私の甥や姪は富山では育っていないから彼らと話すときに富山弁は出てこない。

個性を決める遺伝要因はこの中間にあり、つまり「生まれか育ちか」ではなく「生まれも育ちも」なのだ。
私は幼いときに短気な子だった。それが露呈するたびに母親からは「父親に似て短気だ」と叱られた。「なぜ私は穏やかな祖父母に似なかったのだろうか?」と悩んだことも多い。
けれど個性の源=自分の脳は変化しうる。
ロンドンのタクシー運転手になるための試験は難しいことで知られていて、合格するには2万5000本ある市内の通りと、ホテル、レストランのランドマーク、それらの最短ルートをすべて記憶しなければならない。試験の前後で脳内を比べてみると、合格者の方が不合格者や試験をあきらめた人より記憶にかかわる部分が大きくなっていたという。
また、ジャグリングを始めると運動や感覚の協調に関係する脳の部分が大きくなるという。
短気をコントロールできるよう努力し続ければ、脳の配線も変わるだろう。
「遺伝だよ」と言われると、自分ではどうしようもできない、無力感に苛まれてしまう。
けれど、そんなものだけでは決まらない。環境、経験、記憶による学習によって日々個性は作られ、変化すると科学は教えてくれる。