院長ブログ

2024.05.11

帯状疱疹ワクチンについて

私の部屋からは大きな4車線の道路からの音が聞こえ、寒い時期には隠れていたバイカー達のエンジン音が、春になると増えてくる。中には暴走族を思わせる爆音も聞こえてくる。
ウイルスの世界にもしばらくは宿主の体に隠れていて、神経という道路で突然暴走する、あたかも暴走族のようなやつらがいる。それをヘルペスウイルス(族)という。
暴走しだすタイミングはストレス、紫外線、疲労など、宿主の免疫力が狂った時で、彼らにしてみれば、細胞の中にじっとしている=宿主の免疫に攻撃されない、というwin=winの関係が壊れるから、宿主に見切りをつけ、他に移ろうとするのかもしれない。
そんなヘルペスウイルスには8つの構成員がおり、その中で唯一ワクチンで予防できるのが”水痘・帯状疱疹ウイルス”である。
この名前は非常にわかりやすい。(多くは)子供の頃、水疱瘡(みずぼうそう)になることで体に入る。
私は中学一年生で罹り(その時の話)、母親にカサブタを剝がされたせいで出来たあばたをずいぶん気にしていたが、本当に気にしなければならないことは帯状疱疹になる宿命を背負ったことだった。
若く体力があるうちはいいが、50歳を過ぎるとそれまでの倍の確率で発症してしまう。80歳を超えるとさらに倍率がドンと増える。免疫が狂えば狂うほど発症し、結局生涯で3人に一人は帯状疱疹になってしまうのだ。そして、帯状疱疹になった2割の人に神経痛が残ってしまう。
そこで、ワクチンだ。現在ワクチンには2種類あり、その特徴をまとめた。

この表を見ると有効性が高く、予防効果も長い不活化ワクチンを選ぶか?それよりは劣るが助成金を使った自腹額が安い生ワクチンを選ぶかが戦略の分かれ目だと思う。
さっきから、うだうだ数字を並べてはいるが実はホモサピエンス(=私たち人間)は数字が苦手だ。これは例えば喫煙による肺がんのリスクを叫んでも、体に悪い喫煙をせっせとやりたがることでも想像できよう。ホモサピエンスは今の行動によって、未来の自分がどうなるかを予測することが上手とは言えない動物で、今さえよければそちらを選んでしまう。だからどんなに有効性を訴えても隣の奥さんから「帯状疱疹なんてなんないわよ、なんか新しいワクチンって怖くない?」と聞くと、がぜん不安になって接種したくなくなる。でも他人の意見に流された場合、帯状疱疹になって痛みでうんうん言っている時に、文句を言わずに”自分で決めたから”と言えるホモサピエンスは一体どれくらいいるだろう?
体の中で、暴走族の”ゴットファーザー”のホーンが鳴ってしまっては遅い。是非ワクチンを接種して欲しい。鎮痛剤にアレルギーがある私には帯状疱疹の痛みは死活問題なので今日(5/11)接種しました。今のところ熱もなく、ちょっと痛い程度です。


当院では不活化ワクチンのみを受け付けています。
接種するには
①接種の日時を電話(055-927-3387)で予約する。
②保健センターで、帯状疱疹申請書兼申出書を作成(あらかじめ印刷して書いていくと便利。沼津市の場合はココ
③接種当日に申請書を受付けに渡す。尚、費用は1回12000円で、2回で24000円です。