院長ブログ

2021.03.17

鳥に教えてもらったこと

 ダイニングの私が座っている場所からはベランダからよく見える。
12月ごろからパンくずを野鳥のエサとして置いていて、
イソヒヨドリとセキレイが食べに来ている。
イソヒヨドリはセキレイより体が大きく
この2匹がエサ場で鉢合わせたときは
なわばりにうるさいイソヒヨドリがセキレイを追い立てている。
我が家のイソヒヨドリは胸がオレンジで羽がブルーのオスだ。
セキレイを追い出し、エサを独り占めした後、
ベランダの手すりの角に陣取って、
心から満足している風に周囲を見渡している。
その時に朝日が当たると、
とてもきれいなオレンジとブルーの色が出て
まるで「I'm king of the world!」と
タイタニックの船首で叫んでいるディカプリオのようだ。
この彼にも恋の季節がやってきて、3月の上旬から鳴き始めている。
これはメスのイソヒヨドリに鳴き声をアピールして求愛しているのだ。

ダーウィンは「クジャクの尾羽を眺めるたびにいつも気分が悪くなる」
と言っていたそうだ。
「環境に適しているものが生き残る」進化論を唱えたダーウィンには、
メスにモテるためにしか役目のない、クジャクのオスの美しい尾羽が
どうして残っているのか説明できなかったからだろう。
環境に適している者ばかりではない、
メスにモテモテの美しい(しか取り柄のない)オスだって生き残る。
進化が必ずしも合目的ではないことは鳥の求愛でよくわかるという。
セイランという鳥のオスは、ダーウィンに
「洗練られた美は魅力としてしかなく、他の役目には立っていない」と
評されている。
求愛の時には羽を広げ、円錐形にしてメスを包み込む。
セイランの羽は写真のように金色の球のような模様があり、
羽の先端に向かって球が大きくなるようになっているので、
包まれているメスの視点で見ると、
遠近法の視覚効果で、
何百もの同じ大きさの金色の球が揺らめくのだという。
プラネタリウムみたいではないか!
ニワシドリ科の鳥たちはきれいな羽を広げたり、ダンスするのではなく
別宅を見せてメスにアピールする。この別宅は巣としてあるわけではなく、
メスにもてるためだけに作るオスの自分劇場なのだ。
写真のアオアズマヤドリはロイヤルブルーで別宅を飾る。
動物学者によると、ロイヤルブルーの面積が大きいほど
メスがそのオスを選ぶ確率が高くなるという。
メスはどの色よりロイヤルブルーが好きなのだ。
メーガン妃ではなく、キャサリン妃なのだろう。


我が家のイソヒヨドリ君の歌声も熱を帯びてきている。
オスとしてのホルモン(テストステロン)の影響で、
今はメスとカップルになることしか頭にない。
メスに選ばれると今度は子育てホルモン(プロラクチン)の作用で、
2匹で巣をつくりヒナを育てるだろう。
95%の鳥は夫婦で子育てをするが、
うえで紹介した”美”意識高い系の鳥は
巣をつくるのも、子育てするのもすべてメスだけが行う。
オスは自分の”美”のために一生をつぎ込む。
こういうオスが美しい種類のメスはえてして地味だが、
それは「メスがオスを選ぶ権利を100%持っているから」だそうだ。
人間はオスにも選択権がある。
だから、メスが”美”につぎ込む労力が必要とされる。
ここ最近は朝に、昼にイソヒヨドリは鳴いている。
イソヒヨドリみたいに鳴き声でアピールするタイプの鳥のメスは
鳴き声の種類が多いオスを好むのだという。
鳴くのにはとてもエネルギーが必要で、
それは婚活市場に病弱者が参加することを妨げる、
フィルターになっているという。
そういえば最近は今までより痩せているように見えた。
「身も細らせるような恋をしているのね」と勝手に思っていたけど。。。
結婚するって、大変だね。