院長ブログ

2020.09.06

いいこと やなこと

とある日、まだ小学校低学年のその子が嬉しそうに診察室に入ってきた。
見ると手にノート持っていたので「それ、なあに?」と聞くと、
待ってました!といった表情で「日記だよ」と渡してくれた。

ちょっと話はそれるが、人はいいことより悪いことを長く覚えている。
特別定額給付金をもらったことはもう忘れつつあるのに、
ポンタカードを忘れたことはローソンに行くたびに悔しくて思いだす!
ってことはないだろうか?私だけ?
だから、心理学の論文は99%が不幸に関するもので(うつや精神疾患)
幸福に関するものは残り1%だった。
むしろ人が幸福や満足になるメカニズムをむしろ解明しよう!
といういわゆる”ポジティブ心理学”が台頭してきた。
そのポジティブ心理学の大家、マーティン・セリグマンが提唱したのが、
「3つの良いこと」である。
毎日寝る前にその日うまくいったことと、なぜうまくいったのかを3つ書く。というものだ。
セリグマンの実験では1週間続けることで、抑うつが減り、幸福感が上がる。らしい。
さて、3つも良いことを書いたことは無いが、実は私も5年前から日記をつけている。
良いものとか嫌なものとかにかかわらず、
感情を文字に変換させる過程で頭の整理が働いているから
物事をより客観的=ありのままにとらえられる。
いろいろ何か感情がまとわりついたままの事象より、
ありのままの方が心を楽にさせる。ことはないだろうか?
「ローソンでポンタカードを忘れてポイント損して悔しかった」
と日記に書くことで、そのことはそれで御終い!ハイ終了!となるのだ。

話は戻り、その子の日記は”いいこと”と”やなこと”が毎日書いてあった。
ある日の”いいこと”には「ゲームをいっぱいやれたこと」で
”やなこと”には「ゲームをいっぱいやって、しかられたこと」と書いてあって
診察室のみんなでしばし笑ってしまった。禅問答だね。深い。
笑いながら日記の一番初めを見ると
”いいこと”に「日記を書くノートを買ってもらったこと」と書いてあった。
まったく子供って。。。
その日の私の”いいこと”は「子供の純粋な心を垣間見れたこと」だ。