院長ブログ

2026.03.01

1年で一番長い日

「これから半日以上、君らは一年間で最も多い患者さんを受け入れることになる。花粉が大量に飛散して迎えるこの土曜、この日のために他の日があると言ってもいい。”無事に家に帰る”この一つの目的のために私たちは結ばれる。これはもう耳鼻科に勤める君たちの宿命だ。君たちは集中する。罵詈雑言、ルール無用に心折れることなく最後の患者さんを送ろう。我々は自分との戦いに勝ち、生き残る。それが今日、花粉記念日だ」なんて、どこかの大統領のように演説したくなるのが、2月の最終土曜日の朝礼だ。(一応、似たようなことを言ってみた)
患者さんからも「6時50分に起きて、7時の予約のボタンをしたら、70番だった」と言われ、レディガガのドーム公演並み!?と突っ込んでみるが、時間を割けない私と違ってガガ様は3時間近く歌って踊ってくれたそうである。
代わりにこのブログでストックしてあるアレルギー関連の小ネタを披露してみよう。採血で子供のアレルギー反応がたくさん出て落ち込んでいる親御さんには、アレルギー反応を推進する遺伝子が欠損しているマウスは物覚えが悪いという実験結果が出たことを伝えたい。この遺伝子が記憶という脳内の処理に関わっている可能性があり、世界大学ランキングで14年連続堂々1位で全米最難関のマサチューセッツ工科大学生は、実際ほぼ全員がアレルギー持ちだという。ちょっと救われないか?
大学の耳鼻科の授業でアレルギー性鼻炎に割かれた時間は1分にも満たなかった。そして試験にも出ない。働いてから30年で3例くらいしか出会わなかった耳硬化症、これは耳疾患の中で一番低い確率なのだが、これには15分くらい時間を割かれ試験に出た。
30年前に世界がこんなに変化して、人間の身体がそれについていけないなんて誰が想像しただろう。
そして年々増え続け、低年齢化するアレルギー性鼻炎を思うと患者さんのニーズと、私たちが提案できる治療はまだまだアンバランスだ。スギ、ダニの舌下免疫治療は効果はある。しかし習慣化できない人は多い。
人は必ずしも自分にとって最良のことをするわけではない、特に自分自身を根本から変えなければならない場合には。と思い知らされる。
ゾレアの免疫製剤注射にしても病院側のハードルは高い。予約をキャンセルされたら、返品不可の1本数万円の薬代を当院が負担するはめになる。「大丈夫な人だろう」と私が感じられない間は治療を決められないと思う。
14時でもまだ70人くらいは残っていた。その頃になると、強固な心も壊れてくる。ラスト20人で「ここから本番だと思おう!」と割と大きめに声をかけたが、誰も返事はしなかった。安直な返事ならしないでよろしい。この言葉は私自身に言っているのだ。
16時を過ぎて最後の患者さんを見送り、今日の仕事が終わったハイテンションの彼女たちに「今日は充実したでしょ。働く喜びを感じたでしょ。それってプライスレス!」と演説したら、「そんなわけにはいかない!」と今度は返事があったよ。