院長ブログ

2022.07.31

いびき・無呼吸を考える(2)

いびき無呼吸に100%効果がある治療法がある。
気管切開という、首に穴を開けそこから空気を出し入れする方法だ。

(イメージ図。首に穴を開け、外と気管をつなげることで呼吸ができる)
いびき無呼吸は完全になくなるが(あっ後、餅食べても窒息しません!)唯一にして最大の問題が声がでないことである。首の穴から呼吸するので声帯を震わすことができず、発声できないのだ。
そんな非現実的な治療法ではなく、当院で行っているいびきの治療法を二つ紹介しよう。
1.ナステント
軟口蓋(のどちんこの裏側)付近が狭い人に効果がある治療です。
この部分が原因のいびき無呼吸に対して、鼻から管を入れ空気の通り道を確保しようという作戦です。
短すぎると効果がないし、長すぎると管がのどを刺激してオエオエするので、病院で管の長さを決めるフィッティングをやります。フィッティングの結果を処方指示書を書くので、それを持って行って自分の長さのナステントを購入する。という流れです。
(ナステントのフィッティング。いい位置になるように長さを決めている)
今までフィッティングしたひとで使用後の感想を聞けたのは2名。
1名は「毎晩鼻に管を入れるのが大変で継続して使えない」で
もう1名は「鼻水やのどの粘液で管の穴がふさがりがちになってしまう」でした。

感想を聞けた数が少なくてまだまだ評価を下せないのですが、”自分の鼻に自分で管を入れる”は高いハードルのように思えます。 

2.CPAP治療
3年前まで私の夏の悩みと言えば、東京の友人を自宅に招けないということだった。他のすべての時期、沼津を満喫してもらっているのに夏だけは招待できていなかった。それは彼女のいびきがひどいからである。我が家は1台のクーラーでリビングと寝室を冷房しているので、いびきの音を聞かないようにするためリビングと寝室のドアを閉めると冷房が寝室に回らなくなるから、というのが細かい理由だ。
お互い50代になって、健康が担保がない資産と気が付き始めたから「無呼吸の治療しない?」と提案してみた。若いときは「そんなの必要ないよ!」とその話は終わり!って感じだったのが、「治療してみようかな」と乗ってくれた。
重症の睡眠時無呼吸症ということはいびきの音でわかっていたので、睡眠検査で無呼吸指数を確かめ、CPAPをつけて寝てもらうようにした。

(機械を装着して寝ている。機械から強制的に空気が気道に入る。いびき音はもはやない)

CPAPはいびき無呼吸の原因が軟口蓋の裏側や舌の付け根あたりが狭く、無呼吸指数が1時間に40以上の方に効果があります。

(仰向けに寝たときに舌の付け根が重力で下がり、気道を圧迫している)
この方は軟口蓋に狭窄は無いのでダイエットでいびき無呼吸から解放されるのではと思っているので提案している。

(舌の付け根は下がっていないが、喉頭蓋がくるまったような形をして狭窄しやすい)
この方は中肉中背だが、喉頭の構造的問題でいびき無呼吸なので、他の画期的な治療法が開発されない限りCPAP治療をしていくことになると思われる。
機械をつけて寝るという煩わしさが許容できる人にはCPAPは効果が高い治療と思う。
今回は2つの治療を紹介したが、狭い部位が扁桃のところだと、扁桃摘出の手術が適応になると思うので、いびき・無呼吸で困っている人がいれば、相談して欲しい。

さて、私の友人はCPAP治療を行ってからは日中の眠気、特に休日に惰眠をむさぼることが無くなって、時間を有効に使えている。と治療を継続している。
彼女にこのブログを書くのでメリットを挙げてと連絡したら「いびき音が無くなったことで、友人(私のことと思われる)が心なしか優しくなり、夏でも自宅に招いてくれたこと」と返事を書いてきた。やっぱり!気づいていたのね。