院長ブログ

2021.06.01

匂いについて

トカゲのつがいをテラリウムで育てるときに、
オスだけ取り出し別のテラリウムに一時的入れ、戻してみる。
何もいないテラリウムから戻ったオスには問題が起きないが、
別のメスのいるテラリウムから戻ったオスは、
メスにその体を地面に叩きつけられるという。
オスの体からドルチェ&ガッバーナの香水が匂ってきたのだろうか?
ということで、今回は匂い=嗅覚について考えてみた。

年をとると、目は老眼、耳は難聴になるのに、
匂い(嗅覚)について大騒ぎしないのはなんでだろう?
いや大騒ぎはしていた。
認知症やパーキンソン病の早期症状では匂いがわからなくなるという話題で。
なるべく早くこれらの病気の人を見つけ出し、
病気の進行を遅らせるために嗅覚が注目されている。
日陰(勝手な意見だが)の感覚だったが”今、嗅覚が熱い”と言っていいかもしれない。
しかし、嗅覚が低下した人がすべて認知症というわけではなく、
実際の診療で一番多いのは副鼻腔炎の存在である。
特に喘息と合併する副鼻腔炎の場合、ほとんどが嗅覚障害を伴う。
昨年からのコロナ感染者の症状にも嗅覚障害があったので、
この患者さんたちは頭を悩ましていた。
うちに通う、生真面目な患者さんは「嗅覚についてどの病院でも必ず聞かれるようになり、
どう答えていいか、毎回悩みます」とのことだったので、
「コロナの前からの嗅覚障害だし、”いつもと変わりません”と堂々と言えばいいのでは」
とアドバイスさせていただいた。
喘息を伴う副鼻腔炎だけではない。
動脈硬化や喫煙者、アレルギー性鼻炎も嗅覚障害のリスクとなりえる。

実は嗅覚も目や耳と同様、悲しいかな確実に年齢と共に衰えてくる。
男性は60歳、女性は70歳を過ぎると匂いが鈍くなるという。
が、「匂いを感じにくくなりました」と受診する人はほとんどいない。
嗅覚を日常で意識することは少ないからだろう。
そして、最も嗅覚を意識する場面であろう”食事”が
年をとると好きなもの、作りやすいものばかりになるので、
匂いの多様性を失っているのではないだろうか?
海軍じゃないけど、週に一度はカレーで鼻を刺激するのはどうだろう。
嗅覚には目や耳にはない、”トレーニングで神経が生き返る!”
という特徴を持っているからトレーニングしてみよう。
筋トレやランニング程つらくない、ただ意識して匂いを嗅げばいいのである。
レモン、ハーブ(クローブなど)、花(バラなど)、、、
嗅覚刺激療法というそうな。

だいぶん前、鮨屋の大将が年頃の娘がかまってくれなくて。。。とぼやいていたので
女の子は適齢期に近づくと、身近な男性の匂いを嫌うようにできている。
そして、免疫的に最適化するように匂いで伴侶を選ぶのよ。
だからそれは無意識の行動よ。と元気づけていたら、
隣に座っていたご夫婦が、
ずっとわからなかった”娘がなぜあの婿を選んだのか”の謎が解けたと感謝された。
奥さんも、”私なら絶対選ばないタイプなのに、娘は匂いで彼を選んだんだ”
とご納得されたようだった。
そう、女性は匂いで選ぶ。ちなみに男性は見た目だそうだ。。。
長年の疑問を、私ごときの与太話で解決してしまって申し訳ない。
疑問は疑問のままのほうが、家族円満かもしれないのに、、、
あの奥さんが、婿の匂いを嗅ぐ姿が目に浮かぶ。