院長ブログ
2025.10.05
ボーカル3
思春期に入るとホルモンの影響で、子供から大人の身体に変わる。他人の目から見て変わるのは身長で、聞いて変わるのは”声”であり、この時期を変声期ともいう。
この時期の男の子は少年時代の名残の裏声と、これからの低い声が混ざり、音声を調節するのが難しそうだ。男性ホルモンが、喉頭の枠組みの軟骨(=甲状軟骨)を鋭角になるよう形を変え、喉頭を下げていく。医学的に書くと小難しくなるが、要はのど仏ができるということだ。喉頭の形の変化で声帯も伸び、1オクターブ低い声になる。
共に伸びる身長と喉頭だが、身長は男性が7%ほど女性より高いのに比べ、喉頭は50%以上長い。喉頭が長いと声は低くなるから、ヒトの男性は必要以上に声が低いということになる。低い声はがっしりとした体格、威厳、耳を傾けるに値する言葉と認識されるようだ。低い声の男性は女性に選ばれやすく、男性からも一目置かれ、生存率が上がったので、現代に多く残ったのではないだろうか。平和主義のボノボはチンパンジーより少し身体が小さいだけなのに声はオスもメスも甲高い。威圧的な声を出す必要が無いので、喉頭が伸びなかったのだろう。
さて、やっと本題に。今回は喉頭の役割の一つ発声の問題について始めよう。
私が学生の頃は声が嗄れやすい職業は「スナック店員」と相場が決まっていたが、現代では圧倒的に「保育士」である。

黄色の矢印が声帯結節。これは過剰な発声、本人の身体と発声能力以上の声を出しているとその結果として起こる。この結節があると、高い声で柔らかく歌う時に声嗄れが目立ってくる。運動会や生活発表会の後、こういう声帯になっている保育士さんは多い。
治療法だが、一言で言うと発声を見直すしかない。「薬で治らないの?」という質問もよくされるが、職業的歌手の音声治療を行っているメトロポリタン劇場の医療監督は「治療法は音声訓練で歌唱テクニックを基礎から学習することで、それは時間がかかる」と書いていたから、自分の発声を腹式発声にチェンジさせる以上の治療は無いのであろう。
その腹式呼吸は広瀬香美先生によると
①仰向けにゆったり寝そべって「寝たフリ」する
②腰に両手を当てる
③息を吸ったとき腰が膨らむことを確かめ、息を吐いたとき腰がゆるむことを確かめる
以上。
とまあ簡単だが、彼女はマイケルジャクソンのボイストレーナーに発声を学んでいるので、私が言うより信頼が置けるだろう。
③の息を吐くときに声を出せば腹式呼吸で話すとなり、これを普段の発声に取り入れば、声帯結節は消えていく。このようなことを教える授業が保育士さんの学校にあってもいいのではないだろうか。

腹式発声に変えても元に戻らないのが、声帯ポリープ(向かって左)とポリープ様声帯(向かって右)である。
声帯の表面で出血が起り、それが吸収されないまま発声していると、写真のようなポリープができる。このポリープは発声方法の問題だけではなく、出血を起こしやすい腹圧の過度な上昇=いきみ、を見直すことも必要になる。
次に、声帯の不適切な使用による最終形態はポリープ様声帯である。長年にわたり無理な発声を続けている生体全体がポリープのように変形してしまう。安静=沈黙は無理なので、音声を改善したければ手術が適当だろう。
最後は喉頭の加齢による変化について

向かって左は50代の女性の喉頭、右は70代の女性のものである。
喉頭がやせ細るのだけが問題ではない。肺活量の低下、横隔膜、腹筋、背筋、首周りの筋肉といった音声決定するのに重要な筋肉の張りが低下すること、粘膜の保湿機能の低下、低下、低下、書いてて悲しくなってきたが、老化はヒトとして避けがたく、若い頃の声から力や響きが失われたものになってしまう。せめてもの抵抗は運動以外にはない。
今回は発声の問題について書いてみた。霊長類は声に敏感で、声から言葉以外のイメージ(体格、感情、健康度など)を認知する。私も落ち着いて話すときは深く低く、緊張して話すと少し浅く高い声になる。言ってることが理解されやすい声で話したい。
私が学生の頃は声が嗄れやすい職業は「スナック店員」と相場が決まっていたが、現代では圧倒的に「保育士」である。

黄色の矢印が声帯結節。これは過剰な発声、本人の身体と発声能力以上の声を出しているとその結果として起こる。この結節があると、高い声で柔らかく歌う時に声嗄れが目立ってくる。運動会や生活発表会の後、こういう声帯になっている保育士さんは多い。
治療法だが、一言で言うと発声を見直すしかない。「薬で治らないの?」という質問もよくされるが、職業的歌手の音声治療を行っているメトロポリタン劇場の医療監督は「治療法は音声訓練で歌唱テクニックを基礎から学習することで、それは時間がかかる」と書いていたから、自分の発声を腹式発声にチェンジさせる以上の治療は無いのであろう。
その腹式呼吸は広瀬香美先生によると
①仰向けにゆったり寝そべって「寝たフリ」する
②腰に両手を当てる
③息を吸ったとき腰が膨らむことを確かめ、息を吐いたとき腰がゆるむことを確かめる
以上。
とまあ簡単だが、彼女はマイケルジャクソンのボイストレーナーに発声を学んでいるので、私が言うより信頼が置けるだろう。
③の息を吐くときに声を出せば腹式呼吸で話すとなり、これを普段の発声に取り入れば、声帯結節は消えていく。このようなことを教える授業が保育士さんの学校にあってもいいのではないだろうか。

腹式発声に変えても元に戻らないのが、声帯ポリープ(向かって左)とポリープ様声帯(向かって右)である。
声帯の表面で出血が起り、それが吸収されないまま発声していると、写真のようなポリープができる。このポリープは発声方法の問題だけではなく、出血を起こしやすい腹圧の過度な上昇=いきみ、を見直すことも必要になる。
次に、声帯の不適切な使用による最終形態はポリープ様声帯である。長年にわたり無理な発声を続けている生体全体がポリープのように変形してしまう。安静=沈黙は無理なので、音声を改善したければ手術が適当だろう。
最後は喉頭の加齢による変化について

向かって左は50代の女性の喉頭、右は70代の女性のものである。
喉頭がやせ細るのだけが問題ではない。肺活量の低下、横隔膜、腹筋、背筋、首周りの筋肉といった音声決定するのに重要な筋肉の張りが低下すること、粘膜の保湿機能の低下、低下、低下、書いてて悲しくなってきたが、老化はヒトとして避けがたく、若い頃の声から力や響きが失われたものになってしまう。せめてもの抵抗は運動以外にはない。
今回は発声の問題について書いてみた。霊長類は声に敏感で、声から言葉以外のイメージ(体格、感情、健康度など)を認知する。私も落ち着いて話すときは深く低く、緊張して話すと少し浅く高い声になる。言ってることが理解されやすい声で話したい。