院長ブログ

2023.05.17

上咽頭って知ってる?

のど=咽頭は単純に上から上中下の三つの部分に分かれていて、上咽頭は鼻から続き、中咽頭は口の奥に、下咽頭は舌の付け根と食道の間に存在する。
この三つの空間は微妙に異なるものを通している。上咽頭は空気を通して、中咽頭は空気と食べ物、下咽頭は食べ物だ。”三本の矢の教え”ではないが、この三つの空間が協力して身体に入るものを最適化している。と考えて欲しい。

解剖のイメージ図(手書き)

その中でも上咽頭は日陰の身だ。中咽頭が扁桃炎だのなんだので、華々しく診療に登場し、下咽頭はその観察の難しさから「下咽頭癌、見逃したらどうしよう」と逆に気にするのに比べ上咽頭は地味だ。大体、上咽頭炎を学生時代に教わったことは無いし、研修医時代からも上咽頭炎について誰かと熱く話したことも無い。そんな上咽頭にスポットライトを当ててみよう!と思う。
上咽頭は鼻から入った空気が通る部分なので、空気の中に含まれるホコリを取り除き、病原体を駆除するバリアーを担当する。ちなみに中咽頭は病原体を侵入させない働きには優秀さを発揮するが、ホコリの除去では上咽頭には劣るらしい。口呼吸だと風邪をひきやすくなるわけだ。

まず、一つ目のスポットライトは、実は「のどが痛い」の半分以上は上咽頭炎ではないか?と思うくらい、上咽頭炎の患者さんが多いことだ。
皆さんは、のどがすっごく痛くて、だるくて、つばも飲めないのに病院で診てもらったら「ちょっとのどが赤いくらいだね」と言われて、自分の感覚と診断の軽さにショックを受けたことは無いだろうか?そんな時は急性上咽頭炎かもしれない。

(左:上咽頭炎の治療前。こんなに上咽頭が腫れていても中咽頭はちょっと赤い程度である。右:治療後)
急性の上咽頭炎はこの写真のようになると、のどの痛みの他に、悪寒、頭痛、倦怠感といったインフルエンザに似た症状が出てくる。違うのは発熱くらいで、そんなに高熱は無い。
またこの写真のようにへばりついた痰がのどの方に流れてくるので、後鼻漏=副鼻腔炎と誤解を受けやすいことに注意しなければならない。(注意するのは私だが)

2つ目はその名も「Bスポット療法」最近は「EAT療法」と呼ばれている、慢性上咽頭炎に対する治療を垣間見る機会があったからだ。
首のリンパ節の腫れと痛みが引かない患者さんを頭頚部の病気に強い先生に紹介したら「上咽頭に1%塩化亜鉛を塗ること(これ、即ちEAT療法)でよくなったよ」と勉強会の時に教えてもらったのだった。コロナの後遺症の中に慢性上咽頭炎もあるので、長く続いている不調があれば上咽頭を見てみるのも一つだと思う。
そして、何を隠そう私自身が急性~慢性上咽頭炎を起こす患者なのだ。忙しいとき、寒くなってきた時、つまり自分の免疫が下がった時に上咽頭がうごめいているのがわかる。このEAT療法、まずは自分に塗ってみようと思っている。