院長ブログ

2013.09.23

歌は訴える

私の出身地高岡は万葉集のゆかりの土地です。

万葉集の編集長、大伴家持が越中守(県知事のようなもの)として赴任し、

たくさんの歌を高岡で詠んだからです。

秋には万葉集の全20巻4516首を3日かけて朗読する会が毎年開かれますし、

高岡と新湊を結ぶ以前に紹介した路面電車は”万葉線”で、

わたしの卒業した小学校の校歌には家持が詠んだ歌が引用されているというように

学校で習うだけではない万葉集があります。

万葉集の本を読んでみようか?という気になったのも友人宛の住所を書いていて

そこにある歌碑を思い出したからですし。

万葉集には、平安のそれとは違い貴族だけでなく、庶民、下級役人など

いろいろな階層の人達の生の声が収められています。4516首も読むのは大変でしょうから、

このブログで、名所紹介も兼ねて2首紹介しましょう。

「馬並めて いざ打ち行かな 渋谿(しぶたに)の 清き磯みに 寄する波みに」

これに対する返歌が

「ぬばたまの 夜は更けぬらし 玉櫛笥(たまくしげ) 二上山(ふたがみやま)に 月かたぶきぬ」

渋谿は今の雨晴海岸で海岸から見る立山連峰の写真は富山を紹介する景色として

必ずといってもよいほど使われています。二上山もハイキングやキャンプ、またデートにと

地元民にとっては慣れ親しんでいる場所です。

さて、肝心の意味を現代風にアレンジすると

「や~宴会盛り上がったな、2次会は馬に乗って雨晴海岸まで波を見に行こうぜ!」

返歌は「もうだいぶん遅いですよ。二上山に月が沈みそうなくらいです。知事」

元気な上司と、早く帰りたい部下という今でも新橋あたりでよく見られる光景です。

人の営みは1000年以上前から変わらないものですね。